自称:小説家 翔子の日常

こちらは、執筆家としての日々の悩みと、投稿完了の報告を綴っていくブログです

読書感想文:「鳴風荘事件 殺人方程式II」綾辻行人 

 

みなさん、こんにちは、こんばんは!!

 

ご無沙汰しております。みなさん、如何お過ごしですか?私は相変わらず元気に過ごしています。

最近、ファッション👗にハマってしまって通販をして過ごしていましたが、最近買い過ぎたという事に気づいて考えを改め直し、パソコンの前に再び腰を置いて小説を書く事に再燃しています。

現在、新たな物語を並行して進行中です。発表は来年夏以降かな?

 

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そんな話はさておき、久しぶりの読書感想文です。

 

9月、実家に帰省しまして、その際持って行きそびれた綾辻行人氏の作品が母の本棚に見つかり、手に取った所、タイトルと表紙に惹かれ、 ”触り” を読みました。やっぱり綾辻氏、「館」シリーズとは違うお話でしたが大変面白かったのです。

大きな違いはもちろん主役とストーリーが違うくらいでしたが、推理小説には変わり有りませんし、大きなお屋敷(別荘)の話でトリックが難解且つ解決した時の爽快感と何とも言えない切ない感情が良かったですね。

 

読了したのは仕事場に戻って来た11月ごろでした。10月末には帰って来ていたのですが色々と忙しかったもので小説を読む時間を設ける事が出来ないでいました。実家で読むにも母が何かと話しかけて来るしテレビは点けっぱなしなので読む事に集中出来ませんでした。

 

近いと言っても島間、母と過ごせる時間を大切にしたいので無視することが出来ません。親子で過ごして来たので喧嘩だったり、怒らせたりしますが、そんな事でもやはり話をし始めるのが家族というものなのでしょうか。

 

また話が逸れてしまいました……。あらすじに参ります。

 

  六年半前の月蝕の夜、美島夕海の姉・紗月が惨殺された!

 ──── 夫の明日香井叶ではなく、双子の兄・響を伴い、鳴風荘を訪れた深雪。再会

 した友人たちの中には、死んだ姉そっくりに変貌した夕海の姿が……。その夜、再び

 不可解な殺人事件が勃発する!犯人は何故、死体の髪を切って持ち去ったのか!?

  著者が初めて「読者への挑戦」を付した長編本格推理の傑作!

                   (裏表紙に記載されたあらすじから引用)

 

あらすじを読んでもピンときませんよね?そう、私も初めそうでした。

姉妹が死ぬ?陰謀?呪い?という非現実的な想像を膨らました程です。しかし読んでみると、少々端的で気付ける人は気付けるような作品です。正直言って「館」シリーズとは比にならない作品です。

トリックは面白いのですよ?ですが、少々想像の余地がないというか、どうしてそうまでしてこういうトリックを利用したのか?って疑問を投げかけたくなりましたね。

 

この作品は

 

「鳴風荘事件 殺人方程式II」

 

1989年に刊行された「殺人方程式───切断された死体の問題───」の続編にあたり、1995年私の生まれ年!)に発表されました。ドラマ化もされ、かの佐野史郎さんが主演を演じました。

ドラマの方は綾辻氏にとって不甲斐ない結果になったと明かされていましたが(1999年刊行の光文社文庫版あとがきにドラマ化についての相談とその時の考えと思いが記載されています)

こう見ると原作小説からドラマ化にするにあたって、制作側の都合と原作者側の都合があって、その後者が否が応にも覆されてしまうという結果に、当時のテレビ業界の闇を感じましたね。

何かと実写化したがる昨今。その流れを否定しクレームをSNSに上げる原作愛読者はやはり作品を守りたいという思いが原作者同様に強いのだなと痛感しました。

 

私は実写化ありきで物語を書いている節もありまして、そう思うとすべてを根本的にねじ伏せられるかもしれないと覚悟を改めました。(書籍化されるのはいつになるか分かりませんが)

 

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この物語は、主人公・明日香井兄弟(叶と響)────ふたりとも同じ読みで: キョウ──── 叶の妻・明日香井深雪が事件に巻き込まれて関わっていくお話。

 

警視庁刑事部捜査一課の刑事という、なんとも事件に関わりやすい主体人物でありながら実は血や暴力が大の苦手で殺人現場に行くとしょっちゅう目眩や吐き気と格闘している所謂無能な人(よくも警察学校を卒業できたなと思う)。

 

一方、一卵性双生児の兄で京都の国立大文学部哲学科に在籍している哲学者志望の男。何事にも興味を持ち、ファッションから古典芸能、ゲームから格闘技、ヘビメタに利き紅茶などなど様々な分野に傾倒している。性格は気まま。27歳まで大学に在籍しているのだから見ても明らかですね。

しかし、その気ままな性格が功を奏し(ているのか?)、探偵業にも興味があり、事件に首を突っ込んでは事件を解決しているという。その推理力は到底素人とは思えないほどで、今回の『殺人方程式』に悩みながらも解決へと導いています。

二人が似ているのは容姿だけ。性格は正反対。しかし、物語の中盤で双子らしい症状が現れる事も……。(そこにはちょっと笑いました)

 

がなぜ警察官という仕事を志したのか、それは物語序盤から明々白々です。

元々星を見るのが好きな穏やかな青年でした。しかし天文学者になるほどでもなく、趣味程度で星を見るのが好きでした。よって、大学の進路では教員採用試験を受けようと考えていたようです。まったくもって刑事とはかけ離れた職業を目指していたのです。

 

彼を変えたのは彼の妻・深雪の存在。

深雪は幼い頃に凶悪な事件に巻き込まれた過去を持ち、その際に警視庁の若い刑事が助けてくれました。それがきっかけで将来は刑事の奥さんになりたいと夢見、最初の事件で偶然、出会った二人、そして惹かれ合い、深雪の尻を叩いて教員ではなく刑事になって欲しいと願うのです。

そこまでして刑事の奥さんになりたいのかと個人的には信じられませんが、夫が殉職してもそれは覚悟の上だという。なんとも肝っ玉の太い女です。←

もどれだけ深雪に惚れたのかも分かりますね。血や暴力が苦手なのに、様々な訓練も研修も受けただろうになんとか派出所勤務から刑事になったのです。彼のその頑張りは素晴らしいですね。

 

とまぁ、こんな具合にツッコミどころ満載な主要人物三名

それが魅力なんでしょうね。

 

時は1982年の月蝕の夜。

女流作家で人の未来が視えるという美島紗月が都内の自宅マンションで惨殺された。当時大学生だった深雪は、偶然再会した中学時代の友人で紗月の妹・夕海と共に、紗月のマンションを訪れ、遺体を発見する。奇妙にも、深雪が雑誌で見た紗月の豊かで長かた黒髪は無残にも切り取られていた。

それから月日が流れて1989年8月17日、深雪は高校時代に埋めたタイムカプセルを掘り出すため、急病で行けなくなった夫・の代わりに双子の兄・を身代わりとして、高校時代の恩師の別荘へ出向く。10年ぶりに再会を果たす旧友らを懐かしみながらその年月の経過に衝撃を隠せないでいた。タイムカプセルにはそれぞれの将来の夢が書き記されており、深雪の夢は無論「刑事の奥さんになること」であり、それが叶った事を自慢したいがため、わざわざ双子の片割れを連れて来たのだった。

「タイムカプセルを開ける会」には7年前に悲惨な現場を目の当たりにした夕海も訪れる事になっている。遅れて夕海が到着すると深雪たちは目を奪われた……そこには、かつての面影を失い、紗月そっくりに変貌していた夕海がそこに立っているのだ。性格もおどついていたのが自信ありげで色気のある女性へと変わっていたのだ。

恩師の別荘の近くに旧友の一人が所有する別荘【鳴風荘】がある。そこで一泊する予定であった。しかし翌朝、夕海が死体で発見される。死体からは髪が切り取られ、他にも様々な物が無くなっていた。

犯人は何故髪を持ち去ったのか。姉・紗月との因果関係はなんなのか、刑事と偽って事件現場に遭遇したが様々な状況から推理を発揮する。

 

この小説には、綾辻行人氏にとっては珍しく(という)読者への挑戦状なるものが記載されている。章の終わりごとにデータが記載されていて、読者も一緒に推理しようという趣向であろう。そういう風変りというかなんというか、面白い趣向は私は好きですね。

まぁもっとも?「館」シリーズ同様、解くのは難しかったですね。

 

それと、この「鳴風荘事件 殺人方宇定式II」ではとある登場人物に、性的少数者が登場します。誰かはもちろん言えませんが、(私が読んでいる80年代・90年代の作家小説の中で初めて)LGBTQについて言及する模様が描かれて驚きを隠せませんでしたね。

この作品が表された1995年・平成7年は性的少数者に対する風当たりは(戦前戦後よりは)弱まったとは思いますが、現在よりは扱いは酷かったと思います。

ですが、実際問題、今では22人に1人。日本においては13人に1人は性的少数者だといいますから、どれほど隠して来たのかが窺われますね。本当な同性愛者なのに世間体を気にして異性と結婚し子供を儲けた方々も多かったかと思います。

 

しかし今は多様性の時代です。同性同士で(結婚はできませんが)パートナーとして認めてくれる区が続々と誕生したり、同性同士で結婚式を執り行ってくれる式場も増えて行っています。

 

私の周りにもLGBTQの友達は多いので応援しています。しかし、注目し過ぎてはいけません。あくまでもいつも通りに接して差し上げることが寛容だと思います。

 

小説は素晴らしいです。

 

それをまじまじと改めて実感させられました。

忙しさにかまけて読むのが億劫になったりしますが、小説執筆の参考・勉強としても読んで行きたいと思い直しました。

日本人作家だけではなく、外国の推理小説も母から預かったので、それも読んで行っていきたいと思います。

翻訳作品にはなりますが、翻訳こそ日本語の使い方や美なんかが感じ取れるんじゃないかなと個人的には感じます。

 

では、また次の機会に、出来たら年明け前には読書感想文を投稿出来たらなと思います。