「面白きことは良きことなり!」
「阿呆の血のしからしむるところである」
先日、「シドニィ・シェルダン が読みたいな」「【紫式部ひとり語り】という本がありまして…」などとほざいていましたが、「有頂天家族」の世界へ飛び込みました。
ひとまず、あらすじをどうぞ:
狸の名門・下鴨家の矢三郎は、親譲りの無鉄砲で子狸の頃から顰蹙ばかり
買っている。皆が恐れる天狗や人間にもちょっかいばかり。
そんなある日、老いぼれ天狗・赤玉先生の跡継ぎ ”二代目” が英国より帰朝し、
狸界は大困惑。人間の悪食集団「金曜倶楽部」は恒例の狸鍋の具を探しているし、
平和な日々はどこへやら……。矢三郎の「阿呆の血」が騒ぐ!
(裏表紙に記載されたあらすじから引用)
少々、読む時間を大幅に確保できまして、2日で約400ページ強を読み切りました。
というより、「続きが気になる!」という所謂”ハイ”になっていましたね。
そもそも6年ほど前、ブック・オフさんにて単行本を購入していたのですが、余りの頁量と、購入当時、速読力を持ち合わせていなかったので読破していませんでした。
ようやく先日、読破することが出来、感無量です。
単行本を読まぬまま、アニメを観ていたのですが、いまいちアニメでは分かりずらい箇所があったりしたので、トランクルームから引っ張り出したりはせず、文庫本の原作を前年11月に購入しました。
要は二冊あります。
(1作目も実は二冊あります。いずれどちらかを売るかどうにかしましょうかね)
やはり、原作小説なだけあって、地の文のおかげで分かりやすかったです。難しい漢字は多少あれども、面白く読ませていただきました。
設定は、前回のリンクを貼っておきますのでそちらでご参照ください。
── 天狗
タイトルにあります、「二代目」とは、かつて、如意ヶ嶽一体を治めていた大天狗・如意ヶ嶽薬師坊、通称:赤玉先生の跡継ぎのこと。
大正の昔、”とある事件”で姿をくらました「二代目」が帰朝したことが物語の本筋です。
「二代目」はその父ともいうべき赤玉先生との大きな確執があります。
帰朝した理由はここでは述べられませんが、赤玉先生を冷たく侮蔑するシーンがなんとも威厳を感じますね。
更に、本作のヒロインともいうべき・弁天とも、「二代目」となんらかの確執がある模様で、壮絶な戦いのシーンで、主人公の矢三郎はただただ見守ることしかできませんでした。
「狸の喧嘩に天狗が出てはならない」
「天狗の喧嘩に狸が出てはならない」
矢三郎が子狸であった頃、老狸の大長老から聞かされた言葉です。
この言葉は幼い矢三郎にとって不快な言葉でしたが、今でもなお、心の片隅に引っ掛かっていました。”何故関わってはいけないのか?” そう思っているほどに。
しかし、この二作目ではひどく痛感することになり、矢三郎は今作で珍しく?成長していきます。
── 恋
今作では、様々な恋が描かれます。
二作目で初登場となる:南禅寺玉蘭(なんぜんじぎょくらん)という将棋好きの狸と矢三郎の長兄・矢一郎との恋。
元許嫁である夷川海星(えびすがわかいせい)と矢三郎の恋。
更に、「二代目」と、ある人物との恋の確執……。
また、下鴨四兄弟の父と母のなれそめも今作で初めて描かれました。なんとも愛らしく、下鴨四兄弟がこの世に生を享けるきっかけがこういう経緯で築き上げられているのかと思うと、我々人間もこのような経緯があるのだろうかと感じさせられました。
ほっこりするところもあれば、複雑で切なかったりしてとても面白かったです。前作とは多少テイストが変わりましたが、それも続編としての”味”ですよね。
── 新キャラ
先述でも触れた通り、二作目からは新キャラが登場します。
二代目
南禅寺玉蘭(なんぜんじぎょくらん)
南禅寺正二郎(なんぜんじしょうじろう)
夷川呉一郎(えびすがわくれいちろう)
夷川早雲の長子。
金長
四国の金長一門の頭領。下鴨家とは総一郎が存命の頃より交流がある。
星瀾(せいらん)
金長の一人娘
誰も彼もが魅力で個性的な登場人物ばかりで飽きさせません。それがきっと、森見登美彦氏の書く小説の良さのひとつなのでしょうね。
総括:
読んでいて、私が思うに「有頂天家族」には本当の悪役というものは居ないんじゃないかと感じました。
もちろん、矢三郎たちを困らせる、人間たち(金曜倶楽部)・夷川家という面々がいますが、金曜倶楽部は、己の欲の赴くままにする行為であって、あえて矢三郎に攻撃を仕掛けているわけでは無いと思い至りました。もちろん、狸にとっては恐ろしい組織ですがね。
夷川家の阿呆兄弟・金閣と銀閣は、まぁいけ好かなかったりしますが、だんだん可愛いと思えて来て仕方がないのです。やることはすべて幼稚で、すぐに矢三郎たちにくみしだかれてしまうのが何とも爽快!
そして度々繰り出される間違った四文字熟語w
しかし、たまに的を得た言葉もあるんですよね。それが、
捲土重来!!!
……気を取り直して……
その金閣銀閣の父親・夷川早雲も下鴨家を目の敵にしています。下鴨家にとっても、早雲とは確執があります。
しかし、それもこれも色々と”理由”があるからで、今の現代の人々にも通じるものがあるのではないかなと感じました。
その理由は物語の最大のネタバレになりますので控えさせていただきます。
そしてこれらは……
……あくまで個人的感想です。