自称:小説家 翔子の日常

こちらは、執筆家としての日々の悩みと、投稿完了の報告を綴っていくブログです

読書感想文: 「有頂天家族」森見登美彦

 

早いもので、残り30日で2022年が終わりです。あっという間に感じましたが、皆様は如何でしょうか?

 

今年は実りある年であると、胸張って言えるかと聞かれたら、小説に関しては無に近いと言えましょう。

時折、挫折してしまいそうになる事がありますが、それでも世に出したい小説がごまんとあるので、諦めずに行きたい所存です。

地の文に躓くと決まって気持ちが萎えてしまい、YouTubeNetflixに現実逃避してしまい、パソコンに触れない日も多々ありますことをここに宣言、並びに反省します。

 

つい先日、経験したることを小説に落とし込もうと画策しております。

内容としてはあまりここでは言えないものになるのですが、フィクションの中にある

ノンフィクションを楽しんでいただければ幸いです。

 

 

さて、先日投稿しました「探偵ガリレオ」の読書感想文の中に触れましたが、タイトルにある通り有頂天家族を読了しました。

読み終えるのに20数日掛かってしまいましたが、約5年ぶりに読んでみて、自分の”読”の速さには、手前味噌ながら、驚かされました。昔は余裕で一冊一か月掛かっていましたもので。

 

では早速、あらすじと参ります

 

 「面白きことは良きことなり!」が口癖の矢三郎は、狸の名門・下鴨家の三男。

 宿敵・夷川家が幅を利かせる京都の街を、一族の誇りをかけて、

 兄弟たちと駆け廻る。が、家族はみんなへなちょこで、ライバル狸は底意地悪く、

 矢三郎が慕う天狗は落ちぶれて人間の美女にうつつをぬかす。

 世紀の大騒動を、ふわふわの愛で包む、傑作・毛玉ファンタジー

 

               (裏表紙に記載されたあらすじから引用

 

桓武天皇が王城の地をさだめてより千二百年。

今日、京都の街には百五十万の人間たちが暮らすという。

だが待て、しばし。

人間などは我らの歴史に従属しているに過ぎないと。歴史も街も作ったのは

我々であると、大法螺を吹く狸もある。

だが待て、しばし。

王城の地を覆う天界は、古来、我らの縄張りであった。天界を住処とする我らを

畏れ敬え。てなことを傲然と言ってのけるものがいた。天狗である。

人間は街に暮らし、狸は地を這い、天狗は天空を飛行する。平安遷都この方続く、

人間と狸と天狗の三つ巴。

それがこの街の大きな車輪をぐるぐる廻している。廻る車輪を眺めているのがどんなことよりも面白い。

私はいわゆる狸であるが、ただ一介の狸であることを潔しとせず。天狗に遠く憧れて、人間を真似るのも大好きだ。

したがって我が日常は目まぐるしく、退屈しているひまがない。

 

上記の文は、原作とアニメにおけるプロローグです。

私個人、「有頂天家族」に得も言われぬ魅力を感じさせてくれたこれらの言葉の羅列。5年以上たった今でも大好きなセリフで、物語の壮絶さと神秘さを表しています。

 

有頂天家族」とは、京都の街にはびこる狸と天狗と人間が様々な運命と縁で混ざり合って紡ぎ出される奇想天外な物語。

 

洛中洛外において、狸と天狗たちが生活を営むその姿は、まさにファンタジーでありながら現実味を感じさせます。

 

袖すり合う通りすがりの人は、もしかすれば狸であるかもしれない。

威厳を放つ背広姿が我が物顔で闊歩して来たら、それは鞍馬天狗かもしれない、

妖艶と凄みを放つ美しい女性が目の前に話しかけてきたら、人間を捨てた大天狗かもしれない。

 

話の根本は【家族愛】と、【敬愛】であると推察します。

天狗に憧れ”先生”と仰ぎ奉り、家族のために東奔西走関わらず馳せ参じ、主人公・矢三郎は父の遺した名言「阿呆の血のしからしむるところ」を信条に京都の街で、大学生に化けながら遊んで暮らしている。

 

矢三郎を含む、下鴨四兄弟は、洛中の狸たちから「立派な父の血を引きそこねた阿呆たち」という残念なレッテルを貼られており、長兄・矢一郎はそれ払拭すべく狸界の頭領【偽右衛門】になることに躍起になっている。

次兄・矢二郎は、とある事がきっかけで、六道珍皇寺の井戸で蛙の姿となって籠っている。

四男・矢四郎は未だ幼く、偽電気ブランと呼ばれる酒の製造工場で修業しているが兄弟の中で化ける力は弱く、ふとした瞬間にも尻尾を出してしまう。

 

狸界には偽右衛門と呼ばれる頭領を選ぶ習慣があり、その偽右衛門は誇りと尊大を持って狸界を束ねる。

矢三郎の父、総一郎は偽右衛門として洛中にその名を轟かせた立派な狸であった。

非凡なる化け力を持ち、京都にそびえる、壮大な如意ヶ嶽に化けることが出来、天狗からも一目置かれる存在である。

 

しかし、その偽右衛門改め総一郎は、大正時代から続く秘密結社・金曜倶楽部によって鍋の具となってしまった。

好き者食い集団の金曜倶楽部は七福神の名を冠する人間たちが月に一度の金曜日に集い、忘年会には狸鍋を食す。

狸界にとって秘密集団の存在は先刻承知であり、忘年会のある金曜日には必ずといっていいほど気が気でない。その上、偽右衛門を決める日とも重なり、ただ平然と森の中で息を潜めるわけにも行かない。

 

狸は天狗に教えを仰ぎ、洛中で生きる術を学ぶ。

その天狗こそが如意ヶ嶽薬師坊、通称:赤玉先生

かつては如意ヶ嶽一体を治めていた大天狗であったが、今は見る影も無く、狭い四畳半に暮らす落ちぶれた飛べない天狗と成り果ててしまっている。

 

しかし、如意ヶ嶽を鞍馬天狗に奪われてしまった今となってもその権威は凄まじく、怒りに触れぬよう努力しなければならない。

 

その赤玉先生には愛する存在がいる。

元人間であり、如意ヶ嶽薬師坊の教えを受けて妖艶な天狗となった弁天である。その名の通り、「金曜倶楽部」のメンバーであり、下鴨家の仇にもあたるのだが、当の矢三郎は彼女に惚れている。その弁天も矢三郎には信頼を抱いていると個人的に思っています。

事あるごとに助け、または脅し、または協力する。

強さゆえに哀しみが灯るこの人物はどうしても憎めない存在です。

 

しかし、どうしても憎しみを隠し得ない人物がいる。

 

下鴨家とは対となる夷川家の存在である。

狸のみならず人間にも愛飲されている偽電気ブランを流通させており、絶大なプライドの高さっぷりが主人公とその家族にとって、目の上のたんこぶとなっている。

 

夷川家の当主である早雲は下鴨総一郎の実弟である。

しかし、その性格は極悪非道であり「偽右衛門」選挙で争う、実の甥・矢一郎をどう陥れようか画策している。

夷川家には三人の子がいる。

金閣

銀閣

そして、海星である。

金閣銀閣の双子の兄弟は父同様、意地の悪い性格だが、末っ子の海星はどちらとも似ず、夷川家と仲違いしている下鴨家の人々を(矢三郎以外)助けている。

 

その他にも、淀川教授という、金曜倶楽部で布袋として所属している、物好き食いの大食いで、矢三郎と深く関わっていきます。

登場人物の人間の中で唯一ではないでしょうか? 矢三郎と関わるのは。

矢三郎自身、父を食べた淀川教授とは話が合い、嫌いにはなれずにこれからも変わらずに付き合っていきたいと願っている。

そもそもの話、淀川教授は矢三郎や総一郎以外の下鴨家にとっても深い縁がある人物でもあるのです。

 

この小説で学べるのは、様々な事情があろうとも受け止められる広い心を持つ事の大切さだと思います。

親愛なる父が鍋になって食べられたというのに、その食べた張本人に信頼を置いて、尚且つ慕うようになっている矢三郎の心の広さに、不思議に思いながら憧れてしまいます。

ある人には矢三郎はただ「諦めている」と取れたり、「阿呆だから」というかもしれない。しかし、頭は「愚か」ではないと思うので、精神面ではしっかりしていると思います。

 

私個人、人との関わりを持ち過ぎて、酷い目にあった経験があるので、大きな期待を持たないようになりました。

どうしてもマイナスな先の結果論を想像して物事に挑む。

もちろん、大きな期待を持つ場合もあります。期待したいですからね。ですが、なるべく期待しないようには心掛けています。

生きづらそうと思うかもしれませんが、元来一人が好きなので楽であります。

 

不思議な物語展開と、矢三郎の語り風でありながら後半では兄弟目線になるのには驚きでした。

一人称視点なのか

三人称視点なのか

はたまた、一人称神視点というありえない書き方なのか。

 

まだまだ奥深いです。小説は。

 

では、続いては十角館の殺人を読みたいと思います。

初です! そして、ようやくです。綾辻行人氏、『館シリーズ』の序章。

楽しみです。

 

日本は今、寒いのでしょうか? 皆さま、お身体にはお気を付けて、温かくしてお過ごしください。

こちらでは毎日暑いです。

 

 

 

 

 

 

読書感想文:「探偵ガリレオ」東野圭吾

皆さん、こんにちは!

 

翔子です。

 

先日の投稿で申しました、探偵ガリレオの読書感想文を書いていきたいと思います!

 

では、あらすじをどうぞ:

 

 突然、燃え上がった若者の頭、心臓だけ腐った男の死体、池に浮んだデスマスク

 幽体離脱した少年……警視庁捜査一課の草薙俊平が、説明のつかない難事件に

 ぶつかったとき、必ず訪ねる友人がいる。

 帝都大理工学部物理学科助教授・湯川学。常識を超えた謎に天才科学者が挑む、

 連作ミステリーのシリーズ第一作。

               

         (裏表紙に記載されたあらすじから引用 俳優・佐野史郎氏 解説)

 

本作探偵ガリレオは、1998年に文藝春秋で刊行され、2002年に文春文庫にて文庫化されました。手元にある、購入した一冊は文春文庫版です。

 

7月に書きました、流星の絆の読書感想文でも少し触れましたが、ようやくガリレオを読むことが出来ました。

とにかく面白かった、につきます。

 

流星の絆はドラマとは少し違った展開が多々ありましたが(私が忘れていただけかもしれませんが)、ガリレオはドラマと似ていました。全部似ているとまでは言えませんが、短編集のタイトルもドラマ話のと同様でしたし、主人公の湯川学もドラマと性格も似ていました。

 

そこで、ドラマと違った面を一つ、それは、湯川学のワトソン役です。

 

Wikipediaでも書かれていましたが、ドラマ版では華を添えるため、柴咲コウさん演じる「内海薫」がワトソン役として出ていました。

しかし小説版では、北村一輝さんが演じた「草薙俊平」がワトソンです。ドラマにおいて、草薙は湯川と組んで活躍したこれまでの功績によって本庁に栄転し、内海に湯川を紹介するところからストーリーが始まっています。つまりは、原作とは違う難事件が前々まで存在し、原作版だドラマに落とし込んだという算段でしょう。

 

ドラマを2007年当時何度も何度も観ていましたし、直近で観直していたというのもあって、頭の中で、福山雅治さんと北村一輝さんが掛け合いをしていましたね。

 

ホント……想像力豊か過ぎて困ります←

 

東野圭吾氏の書き方の特徴である、淡々と語られる展開のおかげで、とてもスムーズに読み進められましたね。そもそも、小説執筆のためにたくさんの小説を読んで行ったからか、読むのが早くなりました。

 

良い事ではあると思いますが、読み落としが恐ろしいのねそこは念入りにしたいと思います。

 

ガリレオシリーズは、その他に「聖女の救済」を購入したので、また読書感想文を投稿しますね。あと、東野圭吾氏の作品は「新参者」も買いました。そちらもドラマで何度も観ていました。

 

次は、森見登美彦氏の有頂天家族です!

もともと、読んでいたのですが、久しぶりに読みたいと思い、改めて購入しました。

アニメ版を先に観ていて、小説もアニメと同様の展開が面白かったのを覚えています。

 

映像化作品好きですねぇ、私。

 

では、また。

 

多少なりとも、私の書く読書感想文を楽しみにしてくださったら嬉しいです。

 

果たして、私の投稿が「読書感想文」と呼べるのかどうか疑問ですが(笑)

帰還しました!

みなさん、お久しぶりです!

 

先日、日本から帰って参りました。

 

一か月間ご無沙汰しておりました。元気にしておりましたか?

私は、とっても充実した日々を過ごす事が出来ました。

 

やはり、日本は良いですね!

欲しい物もたくさん買えましたし、食べたいものをたくさん食べました。行きたい所も立ち寄れました。

 

用事が少し落ち着いた頃、近所の大手書店に向かいました。

 

 

 

ほぼほぼ、小説。延べ、一万円ほど←

 会計した時、ビックリしました(笑)

 

ここで購入商品の内訳を紹介します!

 

・「有頂天家族」       

              森見登美彦

・「有頂天家族 二代目の帰朝」    

            森見登美彦

・「十角館の殺人」            

               綾辻行人

・「人間じゃない」           

               綾辻行人

・「新参者」                

             東野圭吾

・「探偵ガリレオ」                

                東野圭吾

・「聖女の救済」                 

              東野圭吾

・「プロだけが知っている 小説の書き方」 

              森沢明夫

 

                (敬称略)

 

買えました!! 綾辻行人さんの十角館の殺人

母曰く、持っていたが誰かに貸したきり行方不明らしいです。謎いですねぇ。作品しかり。

本当は黒猫館の殺人以降の館シリーズも購入したかったのですが、本屋に行く前に土産物や日用品でスーツケースがパンパンになりそうだったので、今回は諦めました。

なので、最新短編集の「人間じゃない」を購入させていただきました。これから読むのが楽しみです!

 

今回、東野圭吾さんの小説を多いですね。前回、流星の絆を読んでから、先生の作風が好きになり、ドラマ化された、探偵ガリレオ」「聖女の救済」「新参者」を購入させていただきました。

幸せ過ぎて、本を含めて1年分の買い物をした気分です←

 

読み終わったら、読書感想文を投稿しますね!

 

森沢明夫著の「プロだけが知っている 小説の書き方」

小説の書き方が記された本が欲しいなと思い、検索機を使用しながら、棚の中にあるのを漁りまくって、検討に検討した末に手に取った一冊です。

小説執筆の資料本が多くてびっくりしました。迷いそうと思い諦めそうになりましたが、中身が興味深かったのでこちらにしました。

既に読了しました。勉強になりました。

 

このコロナ過で、立ち読みが出来なくなったと思っていたのですが、緩和して読めるようになったのですね! 島にいた頃は、大好きだった立ち読みが出来ないと思っていたのですが、安心しました。

やっぱり立ち読みしないと、どんな本なのか、判断し兼ねますからね。

 

 

本だけではなく、色々な所にも行きました。

 

兄に会いに初めて福岡へ初上陸しましたし、会いたかった親友や、恩師にも再会出来ました。

 

前回の投稿で、「旧吉原跡に行きたい」と話しましたが、今回叶いませんでした……。

 

色々予定が詰まりに詰まっていたので難しかったです。あと、歩きすぎて足裏を負傷したというのも理由付けにさせてください。

 

ただし、皇居には行けました!

普段なら閑散と平和が入り混じった空間だと思うのですが、ちょうど行った頃、

「水際対策」の解禁があり、外国人観光客が多かったです。

 

6~7年ぶり(?)に皇居に行ったのですが、特に修理工事している箇所も無く、奥女中が通用門としていた平川門から入ったりして、大奥で勤める下級女中たちの気分が沸き上がりましたね。

 

平川門から東御苑、そして大手門へ出て、二重橋まで行きました。

 

 

今は、諸事情で非公開になっていますが、「宗美伝」という小説の中で、【日本異界国】の入口が、西ノ丸大手門なので、初めてちゃんと観れて感激しました。

 

二重橋前の広場も、小説の中で登場するのでしっかりと目に焼き付けてきましたし、写真もバンバン撮りました!

こんなに広かったんですね!

 

意識せずに書いていた節があったので、今後、実際の場所を小説で描く時は事前に下調べします。

 

このくらいにしますね、語り過ぎると止まらなくなりそうなので……。

 

では、次は読書感想文で! この一か月半で、「探偵ガリレオ」を読了したので、それを紹介します!

 

 

*報告

みなさん、こんにちは、こんばんは。

 

今回は報告になります。

 

9月28日~10月27日、日本に帰ります。

 

私は、場所は言えませんが、外国の島に住んでいます。昨今の事情の緩和に伴い、日本で必要な用事を済ませるため、1ヶ月ほど日本に帰ります。

さすがに、出版社に自分の小説を持ち込むという事はしませんが、小説執筆の関連の本や、小説を探したいなと考えています。

 

なにかしらの小説家の先生方の話や、旧吉原跡にも久しぶりに足を踏み入れたいなと考えています。

皇居にも行きたいですしね。

 

つきましては、ブログの更新と、小説執筆が留まる可能性があります。

パソコンは持って行き、書くことはするとは思いますが、投稿はしないかな。

 

……多分。

 

何よりも、ご報告でした。

 

これからも、「小説家 翔子の日常」をよろしくお願い致します。

 

 

読書感想文: 「血族」シドニィ・シェルダン(ネタバレ含みます)

九月です。

え、月一投稿ですか?って思いましたよね?

 

すみません、色々と忙しくて読む時間がありませんでした。

韓国ドラマにハマっていることは過去の投稿でお話しましたが、相も変わらずで……

 

韓国ドラマ→YouTube→日本ドラマ→小説執筆→読書

 

という優先順位が出来てしまいました。

多趣味もなかなか大変です。

 

善処しますね。

 

───────────────────────

では、本題に入ります。

 

今回読んだのは、タイトルにもある通り、シドニィ・シェルダン

 

「血族」です。

 

上下巻合わせて687ページと、前回読みましたゲーム達人より少なめですが、物語はさらに複雑さを極め、登場人物たちの多さでこんがらがってしまったのでスピードが遅くなってしまいました。

読み始めたのが、ゲーム達人の読書感想文を投稿してすぐくらいだったと思います。なのに、一か月も過ぎてしまいました(汗)

 

一日にいろいろなことをぶち込むより、一つの事に集中していくことを心掛けたいと思います。

 

では、あらすじに参りましょう。今回も巻末や表紙裏に記載が無かったので、オリジナルあらすじを書きます。どうぞ、

 

 世界第二の規模を誇る薬品化学会社「ロッフ社」の社長、サム・ロッフが不慮の

 事故でこの世を去った。彼の右腕ともいうべき人物、リーズ・ウィリアムスは

 その一報を緊急電話で知り、すぐさま、サムの血族たちに極秘の電報を送った。

 

 報せを受け取った、四人のロッフ社重役たちは突然の訃報に種々の反応を見せた。

 彼らは、会社の株の公開を期待していた。しかし、社長のサムは頑なに株の公開

 を認めず、ロッフ家の血族と結婚した重役たちには決められた額しか与えられて

 なかった。

 それぞれ、様々な思惑を繰り広げ、窮乏を極めていたのだ。

 次期社長となるのは社長の娘であるエリザベス・ロッフであり、彼女に多大な期待を  

 かけた。

 

 ところが、当の本人のエリザベスは、父の死をリーズから直接聞き、色々と考え

 を巡らすうちに、現実であることを受け入れ、社長になることに気後れしていた。

 しかし、ある日、別荘の屋根裏部屋にある書棚に、曾祖父の功績が綴ってある自伝を

 発見した。先祖の生き方と、「ロッフ社」の歴史を読み進めて行く内に、己の体には

 曾祖父・サミエルの血が流れているのだと自覚し、社長に就任することを決意。

 

 そしてエリザベスは父と同様に株の公開を拒否した。重役たちの期待は脆くも崩れ去

 ることになる。「ロッフ社」の真実や、父の死の真相、重役たちの思惑などが

 エリザベスに襲い掛かる。挙句には命の危機まで彼女を追いかけ回していく。

 エリザベスの運命やいかに?

 

ロッフ性の人間は皆女性です。それら女性群と結婚した男たちが重役会議の正式メンバーになっています。

それが: 

 アンナ・ロッフ×ワルター・ガスナー

 シモネッタ・ロッフ×イボ・パラッチ

 エレーヌ・ロッフ×シャルル・マルテル

 

そして、もう一人重役会議のメンバーがいます。それは、母親がロッフ家であるアレック・ニコルス卿です。アレックは売れない女優をしていたビビアンと恋愛結婚しました。

 

こいつらがね(こいつらって言うな)、とにかく出来損ないというか、人間の醜くさを集めたような人達ばっかりなんですよ。

 

ワルター・ガスナーはロッフ家というブランドが欲しいために、年上のアンナに恋い焦がれた振りをし、彼女を征服していきます。ワルターの束縛に苦しめられたアンナは次第に精神的に堕落していく。

 

イボ・パラッチは遊び人で、妻のシモネッタとは恋愛結婚だったんですが、他にも愛人・ドナテルラがおり、それぞれに三人ずつ子供を作ってしまうゲスいヤツ(しかも正妻は女児、愛人は男児。子供たちは愛してはいますが後継者として男児が欲しいとほざきやがる)。

イボとシモネッタ、そして、金を要求するために奮闘するドナテルラから逃げるように走り回る姿がとても滑稽でした。

 

シャルル・マルテル……というより、エレーヌ・ロッフがとにかく奔放で男勝り。行為を嫌がるシャルルを無理やり侵したり、牛耳って行く。そんな生活に耐えきれず、シャルルは妻の宝石を盗んで金に換え、逃げる為の投資をし始める。本物の宝石は模造させて金庫に戻すという意地汚い奴ですが、結局バレてしょんべん漏らすシーンは笑った。

 

アレック・ニコルス卿は英国下院議員で身分はやんごとなき人物って感じですが、妻の金遣いが荒いせいで、ギャングたちに借金を返すようにしつこく責められ、また、他の男たちに走る妻を捕まえて置きたいと願いながら、自分は、待ちゆく金髪の女性(妻のビビアンと同じ髪の色の女性)に行為をさせながら殺していく撮影パーティーに参加し、傍観者として自身も楽しむという一風……いや相当変わった癖を患ってしまう。

そして、この作品の真犯人でもあります。

 

リーズ・ウィリアムス。幼い頃から変わった名前と見た目で色んな人から奇異に見られますが、彼は持ち前のど根性精神で、色んな仕事に真摯に勤めていきます。大人になるにつれ磨きがかかり、夜間学校にも通って知識を得て、本当の自分と表ヅラの自分を作って行きます。

その成果は彼に大きな形として残って行きます。薬店の店長にまで上り詰め、人気販売員になり、必要もないのに薬を買い求める女性客で混雑するほどです。そこで、彼をヘッドハンティングしたのが、サム・ロッフ。リーズは当初迷いますが、だんだんサムの志に惚れ、彼の片腕として活躍していくことになるのです。

作品中で、彼の行動に怪しげな雲行きが現れますが、大丈夫です。なぜなら、小説の最初っから登場し、サムの死を心から残念に思っていたのですから。

 

この物語はエリザベス・ロッフが主人公ではありますが、下巻からは、影が薄くなり始めていきます。

それは、ロッフ社に起きる様々な事件に首を突っ込み始める、変わった性格の持ち主のチューリッヒ警察の刑事・オルニュング刑事の存在です。彼は読者と共に登場人物たちの状況や情報を精査していく登場人物です。

自分の所属する警察署の署長に嫌われており、生真面目で、冗談や常識が通じない、冴えない小男なのですが、彼には隠された能力があります。それは、コンピューターと会話し、人間の記録や経歴、逮捕歴、購入履歴を調べ上げることが出来る超常的な頭脳です。彼の力に掛かれば、色んな人間の情報が手に取るように分かるので、コンピューターを貸す人たちは、彼を恐れるほどです。

犯人のメドが立ち、エリザベスとも関わって行きます。

 

そして、最後、エリザベス・ロッフに行きましょう。

彼女は、前半に出てくるときと、過去編の彼女では全く性格が異なります。何が彼女を変えたのか、それはリーズ・ウィリアムスの存在です。彼女と彼の年齢差はこの作品中では分かりませんが、およそ二十歳は違うでしょう。彼女が女学生の時には、リーズはサムの元で働き、エリザベスを心配し、話し相手にもなってくれていました。

エリザベスは幼い頃から父の愛に飢え、父からの誉め言葉を貰いたいと必死になりますが、サムは仕事人間で、全く構ってくれません。大人になっても、誕生日の日にも無視。

「サイッテ~」と思いましたが、そのおかげでリーズとエリザベスはくっつくことになるのですが。

サム自身も、娘が憎いという訳ではなく、徐々に彼女に信用を置くようになるのです。間接的に、エリザベスに仕事のことを教えて行き、経験させていくのです。

 

最終章のネタバレになりますが、他の重役たち、ワルター・ガスナー、イボ・パラッチ、シャルル・マルテルの最後が描かれていないのがとても不思議でした。

最後のページを何度もめくりましたよね(笑)「え?これで終わり?」って。

 

多分ですが、彼等の結末は読者の想像に任せるという事ででしょう。シドニィ・シェルダンの成せる技でしょう。ゲームの達人から四作品作って行ったので、何かしらの意図があるのだと私は考えます。

それに、不思議なラストが逆に興味をそそられました。

 

如何でしたでしょうか?

 

ネタバレを含む感想文ではありましたが、それでも読んでみたいと思ってくださったら幸いです。

 

 

読書感想文: 「ゲームの達人」シドニィ・シェルダン

八月になりました。

 

八月には、秋風月(あきかぜづき)という異名があります。

ぜんっぜん秋風は吹きませんよね、八月って。

もはや日本の四季は失われつつあると言われています。春と秋が消えたとか、消えてないとか。温暖化の影響は、日本が持つ四季を失くすのですね。

 

とにもかくにも、夏真っ盛りとなるこの時期、皆さま、体調には十分お気をつけください。

 

────────────────────────────────────────

 

つい昨夜、シドニィ・シェルダンの「ゲーム達人」を読了しました!

上巻・下巻とあるこの作品、合わせて830ページ超ありますが、するすると読み進められました。

 

もうね、読む手が止まらないんです。面白くて。

 

まだ一作しか読んでいませんが、シドニィ・シェルダンの書く小説の登場人物は、現実に居そうな感じがあって、人物像や心象情景が丁寧に描かれていて、とても惹き付けられました。

小説家の力ってそこなんだと思うのですよ。

……まあ、小説描いて2年経ったヤツが何を言ってんだって思うかもしれませんが、改めて気付かされたのです。

 

では、あらすじをご紹介します。巻末にも表紙裏にも記載が無かったので、オリジナルあらすじを書きます。どうぞ、

 

 物語は、ケイト・ブラックウェルの90歳の誕生日パーティーから幕を開ける。

 アメリカ合衆国大統領からの祝電、最高裁判所長官からの乾杯の挨拶、

 知事よりの祝辞、と、やんごとなき面々がケイトに祝いを述べた。しかし、当の彼女

 は「馬鹿馬鹿しい」と心の中で一蹴した

 彼女は財閥の女社長。90歳の齢を経ても、はっきりとした強い口調で話し、

 招待客を驚かせた。

 そして、所は南アフリカ、ダイアモンド・ラッシュの時代に遡り、『ゲーム』

 が幕を開ける……。

 

この小説は、五人の登場人物に光を当て、全五章で織りなされる、とある”ゲーム”の話。

 

ジェミー

 一途な情熱に生きる明るい青年。理由あって、己の人格を捨てて復讐の鬼と化すが……。

ケイト

 ある男の落とし子として生を得るが、清らかな名とは裏腹に、もって生まれた駆け引きの才で人を操り、仕事に生きるが、何ごともやり過ぎる……。

トニー

 大富豪の母に庇護されて生きる無欲で純真な青年。しがらみを捨てて自立を目指すが、その運命はいつの間にか他人の手に握られて……。

イブ

アレクサンドラ

 絶世の美女に生まれた双子姉妹。肉欲に溺れ、美貌を武器に他人を利用して生きるイブ。姉を信じ、かばいながら生きるアレクサンドラに莫大な遺産相続が約束される。完全犯罪を企てるイブには切り札が……。

 

「ゲームの達人」というタイトルだが、その意味がとても深い物だと読み進めて行って気付きました。

多分、読んだことがない皆さまが一番に想像するのは、カジノスロットトランプなどの賭け事のことでしょう。

しかし、このお話のゲームとは(個人的に感じてですが)”どう生きるか” ”どう利用するか”の人生ゲームだと思っています。

一章から既に、ゲームは始まっており、登場人物たちの薄汚れた、愛、執念、憎悪という感情が所々に展開されて行きます。

 

ホラーの「恐怖」ではなく、サスペンス要素がある、「えぇ……そういう……?」という、ゾワッとする「恐怖」が描かれます。

登場人物たちそれぞれが恐ろしい心を持ち、お互いを利用し、利用されていく。

 

最初に述べましたが、シドニィ・シェルダンの描く登場人物は現実に居そうで居ない。 しかし、フィクションでいてノンフィクション的な書き方がとても素晴らしかったです。

歴史的にも触れた内容も多々あり、「ああ、こういう人居そうだ」と思わせられましたね。

 

個人的に思った話なんですが話していいですか?

歴史小説を主に書いているんですが、私の書く歴史上の偉人が、「この時、あの時、こう思っているかもしれない」というのを大事にして書いています。

 

千姫物語」がその一つです。

www.alphapolis.co.jp

しかし、それは、実際にいた人物を、ある意味では愚弄するという可能性と危険性を孕んでおり、注意していかなければなりません。

ある小説家は、登場人物を当時活躍していた人物を名を伏せて小説に出した結果、バレてしまい、裁判沙汰になるというケースを聞いた事があります。

歴史小説、時代小説は気を付けて書いていかなければならないなと思いましたね。

 

────────────────────────────────────────

 

もし、ブログをご覧の皆さまの中で読んだことない方も、ある方も、ぜひ読んで頂きたと思います。

 

ここで、表紙の折り返しに書かれた文言を皆さまにもシェアしたいと思います。

 

「最初のページを開いたあなたは運のつき。もうこのドラマの世界から逃れられません。シドニィ・シェルダン魔法のワールドへようこそ!」

 

 

次の読書感想文は……

もったいぶった予告めいた記事になりますが、実は、次に読む小説は決めてあります!

 

シドニィ・シェルダンゲーム達人

 アカデミー出版サービス版です!!

 

親がよく読んでいて、特に翻訳者の訳語が好きなようで、多くのシリーズを持っているんです! 読書がしたいと言ったら、貸してくれました!

 

早速読んでみたいと思います!