自称:小説家 翔子の日常

こちらは、執筆家としての日々の悩みと、投稿完了の報告を綴っていくブログです

読書感想文:「人間じゃない <完全版>」綾辻行人

年末ですね。

皆様、どう過ごされていますか?

私は、実家の島には帰らず、この小さな島で過ごすことを決めました。お察しの通り、味気ない生活を送っていますが、充実していますよ。

なにせ、小説を読んで、小説を書いて過ごしているのですから。

 

ある時ふと、小説を読みたいなと思って収納ボックスに入れていた、

「人間じゃない <完全版>」を手に取りました。

単純な感想だと、「面白かった」です。

辛辣な感想だと、『館』シリーズより、読み劣りは若干感じました。

 

それはまあ、私個人が未だ読んだことの無い、既に刊行された話の後日譚であったりするので読み劣りしたのかもしれません悪しからず。

 

1日で読み終えました。長編ではないので、スンと入ったのもあるのかもしれません。

だからと言って単純ではなく、三人称一元視点で書かれているからか、スラスラと読めました。

自分自身、三人称一元視点の書き方が好きで、よく用いてるんですけど、なにかと右往左往しがちで……そこが最近の悩みごとですかね。来年は小説をたくさん読んで行きたいです、すなわちたくさん買わなきゃならない。

さぁ、つらつらと悩みを吐露するのは止めにして、あらすじに参ります!どうぞ!

 

 かつて異端の研究者が住み、謎の死をとげた<星月荘(せいげつそう)>。

 今や廃屋同然のその家を若者たちが訪れた夜、ドアに八つの鍵がかかった密室内で

 世にも凄惨な事件が勃発する! 表題作のほか、「赤いマント」「洗礼」など

 単著未収録の作品を網羅。異色の実名小説「仮題・ぬえの密室」を追加収録した

 増補・完全版。

                 (裏表紙に記載されたあらすじより引用)

 

 

2017年2月に講談社より刊行した「人間じゃない 綾辻行人未収録作品集」の文庫版で、2022年8月に「人間じゃない <完全版>」と改題、追加収録された一冊です。

 

10月に日本へ帰国した際、池袋ジュンク堂書店さんにて、「十角館の殺人」を手に、もう一冊欲しいなと思って見つけました。

表紙絵がとてもおどろおどろしく、気後れを感じながらも、最近発売されたものと知って勇気をもって手に取りました。

 

収録作品は以下のとおり、

 ー 赤いマント

 ー 崩壊の前日

 ー 洗礼

 ー 蒼白い女

 ー 人間じゃない─B〇四号室の患者─

 ー 仮題・ぬえの密室

の6作が収録された短編・中編集。

 

ミステリとホラー作品を多く著してる綾辻行人氏の成せる技と言えようか、『館』シリーズしか読んでこなかった私は、小説を読み進めていてすべて驚きの連続でした。

【赤いマント】【洗礼】、そして、【仮題・ぬえの密室】はおなじみミステリと呼べますが、【崩壊の前日】【蒼白い女】人間じゃない─B〇四号室の患者─】はホラー要素が強めで身の毛がよだちました。

 

特に言及したい話は、【仮題・ぬえの密室】です。

この章では、綾辻行人我孫子武丸有栖川有栖歌野晶午法月綸太郎麻耶雄嵩山口雅也(敬称略)が実名で出てくる、虚実ないまぜの小説。(見開きの綾辻氏談)

 

「ぬえ」という言葉が出てくる「犯人当て」の作品を四人の同期作家らが追求していく話。

綾辻氏の人柄と小説家仲間の我孫子武丸氏と、法月綸太郎氏との掛け合いがリアルに垣間見えました。

ご本人たちの性格は存知ませんが、上記の氏らと交流を持つ、巻末の解説を寄稿した

新井久幸氏によれば「目の前で繰り広げられているとしか思えない臨場感」らしいです。リアルなんですね。

 

奥様の小野不由美氏も出てくるのですが、奥様のことを綾辻氏は「同居人」と地の文中で表しているのが、ちょっと笑ってしまいました。

しかも、綾辻行人ペンネームなのに「綾辻さん」「小野さん」って呼び合ってるのがかわいらしかった。まあ、一応は小説だし、本名で呼んでいたとしても明かさないですよね。関係ないです、忘れてください←

 

ここでよもやま話、

犯人当てとは、綾辻氏らが在籍していた京都大学推理小説研究会(通称「京大ミステリ研」)で行われる、伝統行事と言われているサークル(?サークルと表して適当なのかどうかはしらん)。

1974年に創設されてから、2017年当時まで第487回続いている

 

会員が、持ちまわりでオリジナルの犯人当て小説を書いてきて、例会で発表する。

「問題篇」だけが示され、参加者に対して「さて、犯人は誰か?」という「挑戦」を突き付ける。いうなれば犯人当てゲームですね。

この【犯人当て】で、会員の力を示すことが出来るうえに、ロジックがヌルかったり、犯人の動機が甘かったりしたらば、指摘を受けて、これから先書くミステリに改善を施すことが出来る良い機会(個人差あり)。

 

私的に、日本の学校であったり、小説を書く交流会というものに縁が無いので、とても羨ましいなと感じました。

社会人でも、参加できる交流会等ってあるのでしょうか?

気になります。

 

これで、今年最後の「読書感想文」となります。来年も書いていきたいと思います。

 

皆様、よいお年を。