自称:小説家 翔子の日常

こちらは、執筆家としての日々の悩みと、投稿完了の報告を綴っていくブログです

読書感想文:「十角館の殺人」綾辻行人

 

館シリーズの序章であり、作者のデビュー作、そして、新本格ミステリーブームを引き起こした気鋭小説!

 

十角館の殺人

 

ようやく読むことが叶いました。

9月末から一か月間、日本へ帰国した際に、書店で買い求めました。

その時、母から聞いたのですが、所持していたけど誰かに貸したままで返って来ていないとのこと。初耳でした。借りパクは行けませんで!←

 

一昨日夕方、館シリーズの序章ともいうべきひと頁を開いた途端に引きずり込まれてしまい、通算1日で読んでしまいました。

 

とにかく、「これがすべての始まりか」と納得の行く世界観でした。

 

綾辻行人氏自身、【〈新装改訂版〉あとがき】で申されていました:

 

 若書きゆえに至らなかったあれこれも含め、細やかな手直しをしたいと考えたわけ

 なのだが、いざ取りかかってみるとこれが、思いのほか神経のすりへる仕事だった。

 いかんせん二十年前、二十六歳の時のデビュー作である。(中略)

 

直したいところは数多あったがそれでは別物になってしまう、とも仰っておりました。

小説家たるもの、たとえプロであっても自身の小説を読み直したり、改訂版を出版社から依頼された場合のチェックは身の毛のよだつほどの ”おそれ” と 多少なりの ”嫌悪” の感を抱いているのだと知って、どこか救われるような気持ちになりました。

 

私はネット小説でしか書いていませんが、手直しを自由にできるからという甘えで、誤字脱字のまましばらく公開されていることにショックしかありませんでした。

指摘してくださっても結構ですよ!

 

「翔子さん! 某頁の何某行の字が間違っていますよ! 地の文もおかしいですね!」

などなど……気軽に教えて下さい!

お待ちしています!

 

www.alphapolis.co.jp

 

 

では、恒例となりました、あらすじをご紹介します:

 

 十角館の奇妙な館が建つ孤島・角島(つのじま)を大学ミステリ研の七人が訪れた。

 館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。

 やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を

 待ち受ける! 

                (裏表紙に記載されたあらすじより引用)

 

感想ブログを書かれた他の方の言葉を借りるならば、本作は〈ミステリーの女王〉と呼ばれた、アガサ・クリスティ著のそして誰もいなくなったオマージュした作品と言えます。

綾辻行人氏自身、数々の本格ミステリ作家の小説に造詣が深く、クローズド・サークル、見立て殺人が物語の題材となります。

 

ミス研の大学生たち、彼等が次々に殺害されて行く恐怖と不安。

・犯人はこの中にいるのではないか? しかし皆、口を揃えて否定し、島には七人しかいないはずと考え、お互い信用できずにいる。

・次第に、中村青司が青屋敷炎上において生き延びていると考えだし、おののく学生たち。

・どうあっても連絡手段が取れない、実質的な巨大密室

・終盤で明かされる ”とある人物” の正体。

 

興奮が止められませんでした。

その ”とある人物”の正体がある一頁で明かされ、自問自答を繰り返しました。おおよその見当はついたものの、その地の文の書き方に全身の鳥肌が立ちました。

 

しかし合点がいかないことを一つ言ってよろしいですか?

最終的には、真犯人自身が殺害の動機を語るのですが、それで推理小説と言えるのかなと。地の文の中で語られているので、探偵や刑事にその旨打ち明けるシーンが無いのです。

それが新本格ミステリというものなのでしょうか?

 

そしてその流れで、もう一つ。

私個人的に、島田潔(しまだ・きよし)というキャラクターが好きなのですが、館シリーズの初登場たる、島田潔の影が少し薄いなと感じざるを得ませんでした。

 

エピローグにおいて、メインの登場人物たる島田がまるで蚊帳の外に取り残されたような扱いを受けていて、読後感が 「水車館以降」と比べて悪かったように思いました。

彼自身が解決するシーンが無いのです。

彼自身の考えを江南孝明(かわみなみ・たかあき)に語るシーンは随所にあったり、”なにか” に感づいてるという描写があるので、そちらに関してはとても良かったです。

ですが、島田潔がメインじゃないのか? と疑問を感じずにはいられませんでした。

 

しかし安心してください(?)、とうに、読者の声を聞いてか聞かずか、はたまた綾辻氏の謀なのか、水車館の殺人からは、推理するシーンがあります。

島田潔がホームズ役ということではなく、あくまでも読者と寄り添いながら推理していくというのがキーなのでしょう。

 

少なくとも、私はそう感じました。

 

 

 

こうして小説感想ブログを書くからには、「読んでみてほしい」「面白い!」という褒め事をつらつらと語るのが正解なのかもしれませんが、私はそうしたくありません。

はっきり言うべき事ははっきりと言う

それが小説を読んだうえの「感想」というものではないでしょうか。

 

 

 

島田潔のことが好きだという突然の告白をしでかしたところで、彼の初登場シーンを少し紹介しましょうか。

 

ワトソン役的位置づけの江南との初対面のシーンでもあるのですが、某宅の揺り椅子に腰かけていた島田が、江南が「推理小説クラブの人」であると、ある人から紹介されたことで、島田は少し興奮気味に椅子から立ち上がった。すると、椅子が揺れた拍子に島田の足に椅子脚がガタンと当たり、痛がってまた椅子に落ちるシーン。そういう些細な描写が可愛い

 

そしてまた、江南に自身が寺の三男坊であると自己紹介し、「ミステリを読んで中で死人が出るたびにお経をあげるくらいしかすることがない」と言って殊勝げに合掌するシーン。そんなことされたら、笑ってしまいますよ!

 

カッコイイのに、茶目っ気たっぷりだし、十角館の殺人で子ども好きということが判明しました。ユーモアがある性格が素敵です。釣りをする子供の邪魔をするという描写も江南目線で描かれてありまして、「絶対現実にいたらモテる人だ」って思いました。

 

今作では島田の次兄が初登場するのですが、またその次兄もユーモアがある方で。警部という身分なんですが、なにかと事件と関係無さそうなことに興味を示す所なんて正に似ています(笑)

 

 

 

 

 

続いての読書感想文ですが、予告はあえて言わずに置きたいと思います。

何故ならとにかく、書きたい小説を書くことに専念したいと思います。

 

今年中には作品を完結に導きたいと考えていたのにこのザマです。

 

少し日常の過程を書いてみたりしますか。

 

気が向いたらまた投稿します。それまで、皆さん、良い小説ライフをお過ごしください。